大本神歌(瑞能神歌)

大正六年十二月一日一 

東雲の空に輝く天津日の、豊栄昇る神の国、四方に周らす和田の原、外国軍の攻難き、神の造りし細矛、千足の国と称えしは、昔の夢と成りにけり。

今の世界の国々は、御国に勝りて軍器を、海の底にも大空も、地上地中の撰み無く、備え足らはし間配りつ、やがては降らす雨利加の、数より多き迦具槌に、打たれ砕かれ血の川の、憂瀬を渡る国民の、行く末深く憐みて、明治の廿五年より、露の玉散る刃にも、向ひて勝ちを取らせつゝ、猶外国の襲来を、戒しめ諭し様々と、神の出口の口開き、詔らせ給へど常暗の、心の空の仇曇り、磯吹く風と聞流し、今の今まで馬の耳、風吹く如き人心、アゝ如何にせん戊の、午の春夏秋に懸け、心落ち居ぬ荒浪の、中に漂ふ苦しみは、神ならぬ身の知る由も、なく泣く縋る神の前、水底潜る仇艦と、御空に轟ろく鳥船の、醜の荒びに悩まされ、皆散り散りに散り惑ふ、木の葉の末ぞ哀れなり。

 

二 聯合の国の味方と今迄は、成て竭せしカラ国の、悪魔邪神が九分九厘、モウ一厘の瀬戸際に、旗を反すと白露の、其振舞いの非義非道、凡ての計画を狂はせて、勝つ可き戦争の負げ始め、永びき渡る西の空、黒雲晴るゝ暇も無く、独り気儘の仕放題、印度の海も掠め取り、茲にも深き経綸為し。次いて浦塩日本海、我物顔に跳梁し、卜ン/\拍子に乗り出して、神の御国を脅迫し、モウ一ト息と鳴戸灘、渦巻き猛る荒浪に、大艦小船残り無く、底の藻屑と亡ぶるも、綾の高天に最と高く、空に聳えし言霊閣、天火水地と結びたる、五重の殿に駆け登り、力の限り声限り、鳴る言霊の勲功に、醜の鳥船軍艦、水底潜る仇艇も、皆夫れぞれに亡び失せ、影をも止めぬ惨状に、曲津軍も慄のきて、従ひ仕え来る世を、松と梅との大本に、世界を救ふ艮の、神の稜威ぞ尊とけれ。

 

三 綾の高天に顕はれし、国常立の大神の、神諭畏こみ謹みて、厳の御魂と現はれし、教え御親の神勅に、日清間の戦ひは、演劇に譬えて一番叟、日露戦争が二番叟、三番叟は此度の、五年に渡りし世界戦、竜虎相打つ戊の、午の年より本舞台、いよ/\初段と相成れば、西伯利亜線を花道と、定めて攻め来る曲津神。力の限り手を尽し、工夫を凝らし神国を、併呑せんと寄せ来り、天の鳥船天を蔽ひ、東の空に舞ひ狂ひ、茲に二段目幕が開く。三段いよ/\開く時、三千余年の昔より、国の御祖の選まれし、身魂集る大本の、神に仕えし神人が、御祖の神の給ひたる、日本心を振り起し、厳の雄猛び踏み猛び、厳の身魂を元帥に、瑞の身魂を指揮官に、直日の御魂を楯と為し、何の猶予も荒魂、爆裂弾の勇ぎ能く、神の軍の奇魂、奇しき勲功は言霊の、天照る国の幸魂、言平和す和魂、魂の助けの著るく、轟く御代を松の代の、四十有八の生御魂、言霊閣に鎮まりて、四方の国々天の下、治めて茲に千早振、神代乍らの祭政一致、開き治めて日の本の、現津御神に奉る、常磐の御代ぞ楽しけれ。

 

四 カラ国の天に漲る叢雲も、砲烟弾雨も晴渡り、日の出の守護と成るなれば、斯上無き御国の幸なれど、十重に二十重に累なりし、糸のもつれの弥繁く、解る由なき小田巻の、繰り返しつゝ行く程に、東の空にもつれ来て、退くに退れぬ破目と成り、弥よ/\出師と成る時は、五十余億の軍資をば、一年経ぬ束の間に、烟散霧消の大惨事巨万の生霊土と化し、農工商の国本も、次第/\に衰ろヘて、青菜に塩の其如く、彼方此方に溜息を、吐くぐ思案に暮の鐘、進退爰に谷まりて、天を拝し地に伏し、狼狽さわぐ弱虫の、カラの身魂は自から、現はれ狂ふ憐れさよ。然れど日本は千早振、神の守りし常磐国、国の真秀国珍の国、神が表面に現れまして、御国を守り給ひつゝ、世界を救ひ玉ヘども、未だ/\心許されぬ、一つの国の御空より、降る雨利迦の一時雨、木枯さえも加はりて、山の尾の上の紅葉も、果敢なく散りて小男鹿の、泣く声四方に竜田山、神のまに/\四ツの尾の、山の麓の竜館、集り居ます神々の、厚き恵みに照り返す、紅の楓葉の、元の姿ぞ目出度けれ。
「神霊界」大正七年二月号